多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

三千年の歴史、黄桂稠酒(趙珩)

 黄桂稠酒は西安の特産だ。その起源ははるか古代にさかのぼり、殷や周のときに神や先祖をまつるときに用いた醴が稠酒だった。「詩経」に「酒と醴を造り、先祖にささげて味わってもらう」という一節があるが、その中の醴も稠酒である。その後人々をもてなすために使われるようになり、「詩経」にも「獲物を調理して客に出し、醴をくみ交わしてともに楽しむ」という一節がある。醴は酒類に属するが、アルコール濃度がとても低く、二度か三度なので、酒が苦手な人でも味わえる。漢時代の楚王劉交も、穆生という酒の飲めない友人をもてなすときは醴を用いていた。
 稠酒の味は江南の米酒や四川の涝糟に似ているが、さらに上回る。余分なものが入っていないし、はるかに芳醇なのだ。私も酒はもともと飲まないが、稠酒は気に入っている。
 西安の黄桂稠酒はモクセイの花も用いて作るので、米の酒の豊かな味わいのほかにモクセイの花のさわやかな香りも楽しめる。西安の「徐記」のものが最も有名だが、今は「徐記の黄桂稠酒」という看板を掲げているところが多く、本物か偽物か見分けるのが難しい。本物の、質のいい稠酒は注いでみれば淡い牛乳のようで、乳白色の中にうっすら黄色が混じっている。稠酒を盛るのは錫の容器がいい。熱くして飲むと美味しいのだが、錫の容器は熱を伝えるのが速く、飲むのに便利だからだ。

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