多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

信陽の筒鮮魚、美食中国


 信陽の料理は種類が多いが、最もユニークなのは筒鮮魚だ。読んで字の如く、鮮を保つため魚を竹筒の中で漬けて、保存する。
 「商城誌」の記載によると、戦国時代、山の民が戦いから逃れ魚を備蓄するために、ハスの葉あるいは竹の葉で調味料で漬けた魚をくるみ、竹筒に入れて山里に持ち帰った。十日以上経つと、その魚は独特の美味になっていたという。漬ける方法は、まず魚の鱗と内臓を取り除き、きれいに洗ってかたまりに切り分ける。それに塩を均等に振りかけて、竹筒に入れ、密封保存する。十日か半月すれば食べられる。魚はあまり小さいのはダメで、一キロ以上のものがいい。筒一本のものは一度に食べ切れないが、構わない。食べたいだけ食べて、残りは筒に入れ、漬け、保存すればいい。当然、筒鮮魚は冬の料理だ、気温が高くなると腐敗してしまうからだ。

 筒鮮魚の調理も簡単だ。まず、ネギとショウガ、トウガラシを油で炒める。そこに水を加えて沸かし、醤油などの調味料やハクサイなどを入れた後、魚を入れる。十分か二十分弱火で煮込めばいい。
 筒鮮魚の三大特徴。
一、「鮮」であること。竹筒の中に十日か半月密封して漬けていたのに、とれたての魚の如く新鮮だ。塩水が魚肉に潤いを与え、「鮮」を保つのだろう。
二、滑らかであること。魚肉はもともと滑らかなものだが、塩水を染み込ませることによって滑らかさが増し、口に入れるととても爽やかだ。
三、魚肉と骨がばらけていること。骨がうまく取れないから魚は嫌だという人が多い。魚の骨が喉に詰まるのはとても不愉快だ。が、筒鮮魚の場合は肉と骨がばらけているので、舌の先で少し押すだけで骨が取れる。便利だ。
 当然、塩水での保存がうまくいかないこともある。気温が高かったり、漬けておく時間が長かったりすると、魚肉も臭くなる。が、腐敗の度合いがひどくなければ、臭いのも美味となり得る。「臭豆腐」と同じだ。「鮮」でなくても「美味」ということもあるのである。この臭みを愛し、故意に塩の量を減らしたり、漬けておく時間を長くしたりして、魚が臭くなってから食べる人もいる。

×

非ログインユーザーとして返信する