多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

水晶蝦餅、梁実秋

  エビは大きいものはあまり美味しくない。イセエビは全身が鎧で覆われて勇ましい姿をしているが、肉はサラダにしか合わず、あまり美味ではない。海水のエビは、淡水のエビほど美味しくないようだ。
 活きたエビを食べるのが好きな人もいる。西湖の楼外楼

の「活けエビあえ」

は、湖水の中の竹の籠で養殖しているエビを取り出して、ひげと口、足と尾を切り落とし、皿に置いて蓋をして出す。客は蓋をわずかに開けて箸でエビをつまみだし、かたわらの小さな碗に入った醤油やごま油、酢をつけて口に入れ、上下の歯で噛んで吸い込むようにして食べる。食べたら殻を吐き出す。皿の上でエビが元気に動きすぎるときは、杯に半分ほどの蒸留酒をかけ、エビを酔わせておとなしくさせる。「活けエビあえ」を食べたときに、不注意でエビをのどの奥まで入れてしまい、命を落としかけた人がいるという。活きたエビを生で食べるのはそんなに珍しいことではない。活きたカニを生で食べるのを、私は見たことがある。

 「活けエビあえ」は私には合わない。が、エビの油焼き

エビの塩蒸し焼き

エビの水煮

なら食べる。殻をむくのが面倒だったら、むきエビの炒め物

やむきエビのうま煮

を食べるしかない。むきエビの炒め物を一番上手に作るのは、福建料理のレストランだ。確か北平西長安街の忠信堂が北平で唯一の規模の大きな福建料理のレストランで、そこで作るむきエビの炒め物は、余計なものを加えず、皿いっぱいにエビを盛りつける。鮮明に輝き、柔らかいがサクサクしている。福建の人はシーフードの調理がとても上手だ。むきエビのうま煮は北平の料理屋が得意だ。料理屋の宴席では、四つの小さな碗があれば一つはむきエビのうま煮だ。クワイを小さく切ったものを混ぜ、あんかけにしている。炒め物もうま煮も、油の使い方と火加減がポイントだ。いい加減なことをやれば、美味しいものは作れない。

 むきエビをたたき刻むと、エビ肉団子あるいは水晶蝦餅が作れる。

たたき刻むときは新鮮ではない残り物のむきエビを使ってもいい、とは思うなかれ。食通の舌はごまかせない。

 水晶蝦餅は、北平錫拉胡同玉華台のものが素晴らしい。一般のエビ肉団子とは異なり、必ずシラエビを用いる。アオエビの方がシラエビより美味なのだが、水晶蝦餅を作るときは純白の色をだすためシラエビを使う。エビ肉七にラードを三の割合で混ぜ、一緒に細かく刻むが、ペーストにはしない。オニバスの実から作ったでんぷん少々にネギとショウガの汁も加え、丸い形にこねる。それを豚の油を用いて揚げるのだが、揚げたものは白い脂肪が凝固し、軟らかな玉のごとく温かで、口に入れるとサクサク感が味わえる。サンショウの粉を混ぜた塩につけて食べる。


 水晶蝦餅には大量のラードが混じっていることを知ってから、あまり食べに行かなくなった。一般のレストランのエビ肉団子にも警戒心を抱くようになった。

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