多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

タイラギ貝柱、梁実秋



 タイラギには薄くて大きな貝殻が二枚ある。殻の開け閉めを司る貝柱は二本だ。一本は殻の中央にあって太く、もう一本は前方にあって細い。これらの貝柱を取って乾燥して、食用にする。

 新鮮なタイラギ貝柱は、私は中国大陸で食べたことがない。アメリカ海岸部のシーフードレストランでは、タイラギ貝柱の油揚げは普通の料理だ。油で揚げるだけの簡単なものだが、黄金色に焦げ、柔らかくて美味しい。中国の乾燥貝柱のように噛めば噛むほど味が出る、というものではない。

 タイラギ貝柱の産地がどこかは知らないが、南宋の詩人陸游が「老学庵筆記」に「明州のタイラギ貝柱には二種類ある」と書いている。明州は今の浙江省にあるので、浙江が産地の一つなのだろう。

 タイラギ貝柱の食べ方は多い。乾燥品なので、先に戻さなければならない。水で戻すより、黄酒で戻した方がいい。大きな貝柱が美味しいとは限らない。小さな貝柱は、往々にして豊潤な味だ。一般的な食べ方としては「球状ダイコンとタイラギ貝柱」があるが、

ダイコンを球状に切るのは手間がかかるので、家庭で作るときは千切りでもいい。「菜芯と貝柱焼き」は、野菜の芯と貝柱を別々に焼いた後、一緒にあんかけにしたものだ。

「芙蓉貝柱」は、蒸した卵の吸い物に貝柱をのせ、再度蒸した料理だ。

 

乾燥貝柱を戻すときに使った水もしくは酒を卵の吸い物に入れておく。以上の三つの食べ方は、貝柱を細かく切る。実は、貝柱を丸ごとじっくり焼けば美味しいと思う。私の母は適度な大きさの貝柱を火腿(中華ハム)の薄切り、冬筍の薄切り、乾燥むきエビと一緒に大きな碗に入れ、紹興酒を注ぎ、蒸籠に入れて二時間蒸していた。形容できないほど美味しかった。

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