多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

中国の山菜(中国のサイト)

 二千八百年前の「詩経」から現代まで、山菜は愛されている。
 私が子供だった頃は、車も大きな建物も少なく、人と樹木は多かった。町の中心から郊外へ行けば、今の都市では数少ない動植物が見られた。チャンチンの木やハリエンジュの木、タンポポやナズナ、セイタカヨモギやセリなど、名前を知っていて食べられる山菜も多かった。これらの植物は大自然の美しい景色の一部であっただけではなく、食物としても人々に愛された。飢饉のときは、人々を飢えから救う希望の星でもあった。
 わが国では山菜を食べてきた歴史は悠久で、多くの山菜が優美な詩や古文に取り上げられている。二千八百年くらい前の詩を集めた「詩経」に「南の高い山に登って、ワラビの若葉を取りに行く。あの方の姿が見えなかったら、心が寂しい。見えたら、とてもうれしい」という詩が掲載されている。春、少女が山に登ってワラビを取りに行くとき、自分が心を寄せている人に会いたい、もし会えればとてもうれしい、という詩だ。

ワラビは、古代であれ現代であれ、広く愛されている山菜だ。わが国の大部分の山林に分布し、若葉をよく食べる。

韓国や日本などのアジアの国に大量に輸出もしている。漢方医学においては、「本草綱目」の記載によると、ワラビはすべての部分が薬になり、熱を清めて腸を滑らかにし、痰を溶かして気持ちを落ち着け、利尿作用もある。現代の研究によれば、野生のワラビには、タンパク質、ミネラルなどが含まれており、睡眠を促したり血圧を下げたりする。

 しかし、一方で、ワラビには発がん物質も含まれている。ワラビを常食する日本のある地区においては食道がんの発生頻度がかなり高いというデータもある。ここまで書くと、ワラビを食べてもいいのか、と思う人も出てくるだろう。実際は、白菜のように長期間大量に食べるのでなければ、発がん性について心配する必要はない。食用時に、浸したり湯がいたり蒸したり炒めたりという過程を経れば、発がん物質の含有量は大幅に低下する。
 「呂氏春秋」の中に「野菜の中でいいものは、雲夢の芹菜だ」と記されている。「雲夢」は、現在の湖北省雲夢県に相当し、戦国時代は楚の国に属していた。雲夢の芹菜は当時の有名な農産品だった。中国古代の芹菜とはセリのことで、古人が常食していた山菜だ。「詩経」の中にも「心楽しく水辺に行って、儀式に使うセリを採る」という詩句がある。

 芹菜の効能は、現代の人はみな知っている。血圧を下げることだ。他に腫瘤や炎症にも効き、焦りを鎮めて免疫力を強める働きもある。セリは芹菜の一種なので、血圧を下げるなどの作用を持つ。
 ジュンサイは江南の特色ある山菜で、口当たりはなめらかで柔らか、長い間食用にされてきた。

「詩経」の中にも記載があり、のちの文書にも多く出現し、一種の「ジュンサイ文化」を形成してきた。文人墨客はジュンサイを用いて、故郷への思いと送別の気持ちを表現してきたのである。杜甫の詩に「私は岷山のふもとの芋が忘れられず、君は千里湖のジュンサイを懐かしく思う。生き別れも死に別れと同様胸が詰まる」という言葉がある。白居易もジュンサイを取り上げた詩を書いており、蘇軾は「三呉の三つの素晴らしいものの一つが千里湖のジュンサイスープだ」と言っている。

 食べるときは、スープにすることが多い。

「世説新語」に「千里湖のジュンサイに調味料を加えれば、羊酪などよりはるかにおいしくなる」と書いてある。「世説新語」は南北朝時代の書物なので、春秋時代から南北朝時代まで、中国人はジュンサイを常食していたのだろう。唐と宋の時代になると、ジュンサイとトウチを用いてスープを作ることが流行した。漢方医学では、ジュンサイは熱を清めてむくみを消し、毒を解いて胃を元気にし、血糖を下げる効果があるとされている。他に、ジュンサイの表面を包むねばねばしたジュンサイぺクチンには肌に潤いを与える作用があるので、顔に塗れば顔面パックと同様の効果がある。

 樹木の若葉や若芽を食べることもある。チャンチンはその一つだ。

チャンチンを食べたことのある人なら、その清新でユニークな味と香りを思い出すだろう。チャンチンには、タンパク質やビタミンC,鉄、カルシウムなどの豊かな栄養が含まれている。
 言い伝えによれば、チャンチンを食用として最初に取り上げたのは唐朝の孟詵という人だ。現存する世界最古の食事療養の専門書「食療本草」を書いた、食療学の開祖でもある。唐時代以降、現代まで、人々は好んでチャンチンを食べ続けてきた。チャンチンタマゴ、

チャンチン豆腐

チャンチン漬物

などが主な食べ方だ。

 食用以外に、チャンチンには薬用価値もある。現代薬理学の研究によれば、抗酸化作用や細菌やウイルスを抑える作用もある。
 ハリエンジュの花も人々に愛される。

わが国北方に広範囲に植えられ、毎年四月か五月に花が咲いて香りをたなびかせる。この時が花を食べる最高の季節だ。ハリエンジュの花の最も典型的な食用方法は、蒸すことだ。

新鮮で今にも咲きそうなつぼみを摘み、きれいに洗ってから水を切り、少量の塩を入れた後適量の小麦粉を加えて均等にかき混ぜ、蒸鍋に入れてじっくり蒸す。蒸し終わったら皿に置いて、おろしニンニク、醤油、トウガラシなどを混ぜた汁をかける。実にさわやかな味だ。ハリエンジュ本来の味と香りを保持しており、色味香すべてが素晴らしい。このほかに、エンジュ包

エンジュ団子

エンジュスープ

エンジュと卵炒め

などの食べ方がある

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