多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

アヒルのレバーの酒糟蒸し、梁実秋

 酒を醸造しているところならどこでも酒糟はある。「楚辞」にも酒糟に関する記載があるところを見ると、古代から食用にしていたのだろう。露店で卵の甘酒煮を食べることがあるが、

甘酒はここで言う酒糟とは異なるものだ。


不思議なことに、我々の台湾では名酒を産するのに、酒糟を購入するのはそんなに容易ではない。山東料理レストランで酒糟魚肉を注文すれば酒糟が味わえるが、本当の酒糟ではなく甘酒を使っていることもある。

 酒糟の食べ方は多い。酒糟魚肉はもとより美味しいが、酒糟アヒル肉も絶妙なオードブルだ。

台湾では見かけないが、肥え太ったアヒルがいないのが主原因だ。北平の東興楼あるいは致美斎の酒糟アヒル肉は、大きな薄切りで、赤身も脂身も皮も肉もあり、酒のいいつまみだ。「儒林外史」第十四回に、馬二先生が酒店のカウンターの酒糟アヒル肉を見て「買って食べる金がない。喉からヨダレを飲み込む」と言う場面がある。この場面の酒糟アヒル肉は鍋から出したばかりのホカホカのものなので、私の言うオードブルの酒糟アヒル肉とは風味が異なる。酒のつまみは冷たいものがいい。稲香村の酒糟アヒル卵も美味しい。

 福州料理レストランの紅糟を使った料理は有名だ。


いわゆる紅糟とは紅麹のことで、酒糟とは別のものだ。うるち米をごはんにして酵母と混ぜて発熱させ、冷ましてから水をかけてまた発熱させる。これを何度か繰り返すと紅麹ができる。紅糟肉、

紅糟魚

など皆美味だ。が、酒糟の香りはしない。
 今語ろうとしているアヒルレバーの酒糟蒸しは山東料理レストランの得意料理で、北平東興楼の最高傑作でもある。東興楼の料理は分量が少ない。小さな皿や小さな碗で出てくるが、精巧に調理されている。大きく口を開けて食べるのではなく、じっくり味わうのである。

上等のアヒルのレバーをきれいに洗って切り分け、酒糟でじっくり蒸す。スープは濁ってはいないが濃厚で、色彩も鮮美だ。

 あるとき、梁寒操さんに悦賓楼に食事に招待された。于右さんが以前よく行ってアヒルレバーの酒糟蒸しを食べていたそうだ。実際に味わってみたが、まさに名実相伴うものだった。レバーの質が僅かに荒かったが、この場所でこういう料理が食べられるのは得がたいことだと思った。

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