北平のユニークな食べ物、唐魯孫
灌腸。
北平の灌腸は豚の腸に片栗粉を流し込んだものだ。薄切りにしたものを平底鍋で焼く。それを刻みニンニクの入った塩水につけ、竹串を刺して食べる。街角でも売っているが、縁日に売りに来ることも多い。
天秤棒の片方に調味料や材料を乗せ、もう片方に炭火を使う平底鍋を乗せ、注文しただけ切って、焼いてくれる。馬油を使っているので、表面は焦げていても内部は柔らかく、とても美味しい。灌腸を食べるためにわざわざ縁日に行く人もいるくらいだ。癖になれば、匂いを嗅いだだけで、足が向く。
豆汁は北平の特産と言っていい。北平以外で売っているのを聞いたことがない。好きな人は酸味のなかに甘みがあり、芳醇で、飲めば飲むほど欲しくなると言う。嫌いな人は酸っぱくてとても臭いと言う。癖になったら、豆汁の露店を見ただけですぐに駆けつける。
羊頭肉。主に羊の顔の前部分の肉を売っているが、
羊の腱や、
羊の舌、
羊の耳
も売っている。
包丁で紙のように薄く切り、牛の角に入ったサンショウと塩をふりかける。寒い時は、肉の表面に氷ができる。そこにサンショウと塩をかけると、頭がスッキリする。焼酎を飲みながら食べると、羊の皮のジャケットを着ているように、体全体が暖まる。
羊頭肉は北平の特産と言っていい。寒い日の夜八時か九時、人のほとんどいない道に西北の風が吹き、ナイフのように顔をえぐる。すると、路地裏から羊頭肉を売る声が聞こえて来る。