多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

銅鍋蛋、唐魯孫

 中国の料理でもっとも大切なのが「火加減」だ。料理によって大きな差があり、一日か二日煮込んで味をつけるものもあれば、むきエビ炒め

のように短時間で勝負が決まるものもある。

 河南料理レストランに「銅鍋蛋」という料理がある。

鶏卵を五個か六個割って大きな碗に入れ、竹箸を使って猛スピードで百回か二百回かき混ぜる。そうすると卵の液体は膨張する。かまどで真っ赤に焼けた銅の鍋に加熱した豚の油、エビ、醤油、さっと炒めたネギ、ショウガを入れ、香りが立ったら、膨張した卵の液体を注ぎ込み、何度もひっくり返す。鉗子で銅の鍋を挟み火から適当な距離を保つのだが、これが難しい。職人の技が必要だ。 卵は膨張しており、給仕が客のテーブルまで持っていっても「ジジジ」という音を立てている。見た目もよく、濃厚な香りも素晴らしい。

 銅鍋蛋は元は赤銅の鍋を使っていた。熱の伝わり方もはやかったのだが、なぜか鉄の鍋を使うようになった。味は変わらないが、鉄の鍋は黒く焦げるので見た目が良くない。

 美食家の袁さんの家で銅鍋蛋をご馳走になったことがある。香りも味も素晴らしかった。袁さんに聞いてみると、「雪舫蒋腿」(中華ハムの一種)

を刻んだものを卵に加えたという。

 私は今、鉄や銅ではなく、磁器の鍋で調理した煮込み卵が食べたい。食べた後洗うのが、磁器は少し面倒ではあるが。

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