多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

獅子頭、梁実秋


 獅子頭は揚州の名物料理だ。形状とサイズから、その名がついたのだろう。北方のレストランでは四喜丸子と呼ぶ。一つの皿に四個置くからだ。北方の作り方は揚州に遠く及ばない。

 私の同級生の王化成さんは、揚州の人だ。幼い頃に親を亡くし、叔母に育てられた。その叔母さんは料理が上手だったので、化成さんも自然に様々な料理を覚えていった。化成さんは外務省で長年働き、駐ポルトガル公使を長年務めた。公務の合間に、様々な料理を作って、賓客をもてなした。獅子頭は彼の得意料理の一つで、私に作り方を教えてくれた。

 獅子頭は誰でも作れるが、上手な人と下手な人がいる。化成さんが教えてくれた方法は以下の通りだ。

 まず、質のいい材料を選ぶこと。赤身七脂身三の細やかで柔らかな豚肉を購入する。硬い部分があってはならない。肉を切るときも注意が必要だ。デタラメに切ってもダメだし、たたくように切って肉がペーストになってもいけない。「多く切って少なく斬る」のが秘訣だ。

 次の手順も重要だ。肉の中に澱粉を混ぜない。容易にばらけてしまうからだ。それゆえ二つの手のひらに澱粉を塗り、その手でミンチを四つの団子に丸める。そうすれば団子の表面が自然に澱粉で覆われ、内部には入らない。団子の形を少し平たくして、油で揚げる。団子の表面が締まり、淡い黄色になるくらいがちょうどいい。

 そして、蒸す。碗の底に冬筍か刻んだ山東白菜を敷いておく。油で揚げた団子をそこに置き、強火で一時間以上蒸す。蒸し鍋の蓋を開けてみて、油が浮いていれば、さじですくって捨てる。

 こうして作った獅子頭は、箸で挟んで食べてはいけない。豆腐のように柔らかいので、スープ用のさじですくって食べる。肉にはネギ汁、ショウガ汁、塩を加えておく。好みに応じて、ナマコやむきエビ、クワイ、シイタケなどを入れてもいいが、細かく刻んでおかなければならない。

 獅子頭は私のメニューの中の重要なものの一つだ。当時北碚の編訳館で共に仕事をした蕭毅武さんの最も好きな料理で、獅子頭を見ると大喜びだった。化成さんは異郷で亡くなったが、その話を聞けば喜んだだろう。

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