多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

焼餅と油条、梁実秋

 焼餅と油条は、我々中国人の標準的な朝食だ。




北方のどの省であろうと、どんな階級の人であろうと、老人であろうと子供であろうと、たいていの人は喜んで食べる。私は北平で生まれ育ったが、子供の頃の朝食といえば、ほとんどずっと焼餅と油条だった。かなり豊かな大家庭では、ワンタンや鶏肉の千切り麺

羊肉入り団子

を食べる資格があったのは父親だけ、ツバメの巣スープや蓮の実スープ


を飲む資格があったのは祖父母だけで、我々のような「民族の幼子」は焼餅と油条で腹を満たしていた。不思議なことだが、焼餅にも油条にも私は反感を持っていない。毎日食べても嫌にならなかった。朝起きると、籠いっぱいの焼餅と油条が我々を待っていた。

 現在の台湾の焼餅と油条は、私が北平で見たものとは異なる。私が見ていた焼餅には、ごまペーストを使ったものや馬蹄形のものなどがあり、油条にはニ、三本を撚り合わせたものや甘口のものなどがあった。焼餅に油条を挟み、手で押さえて食べていた。台湾ではお目にかからない。斉如山さんも感慨深げに「台湾の油条にはサクサク感が足りない」と言っていた。……北平の人は、豆乳よりも甘口みその粥をよく飲んでいた。

私が豆乳を飲み始めたのは十四歳になってからで、父母は一生豆乳を飲んでいなかったと思う。我々の家では、焼餅と油条を食べて喉が渇いたら大きなやかんに入った茶を飲んでいた。甘口みその粥は稀だった。のちに上海に行ってから、細長い焼餅や菱形の焼餅を見た。



油条もとても長くて、焼餅に挟むのに向いていなかった。

 ハム、卵、バタートーストなどの朝食ももちろん、いい。が、私はやむを得ないときしか食べない。私が心に抱いているのは相変わらず焼餅と油条であり、私と同じ嗜好の人も多い。海外に行っても、故郷の食は忘れられない。あるアメリカ籍の華人学生は、台湾に来るたびに、二百セットの焼餅と油条をアメリカに持って帰る。冷蔵庫に入れておき、毎日取り出してオーブンで焼いて食べるそうだ。美味しくてたまらないと言う。焼餅と油条は脂肪と澱粉だけで、栄養学的に見れば、バランスの取れた食べ物ではない。だが、長年の習慣で忘れられないのである。

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