多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

揚州の食、朱自清

 揚州といえば、食事がおいしいところだと考える人が多い。そのとおりだ。北平で江蘇の料理というと、甘ったるいものと思っている人が多い。

が、淮安と揚州の料理を知れば、、江蘇料理は甘いものだけではないことがわかる。でも山東料理のようにあっさりしておらず、油っこいと思われるかもしれない。実は本当に油っこいのは鎮江の料理だ。塩商人の家のコックが作る揚州料理は、山東の料理ほどあっさりしているわけではないが、潤い豊かでさっぱりしており、しつこい味ではない。味がいいだけではなく、見た目も美しい。揚州のラーメンも有名だ。

鶏やアヒル、魚など様々なものを煮てだしを取ったスープは、珍味として有名な熊の掌のような素晴らしい味だ。ふつうはラーメンをどんぶりに入れてからスープをかけるのだが、玄人はスープの中にラーメンを入れて煮る。そうすると味がしみこむのである。

 揚州で最も有名なのは茶館だ。午前も午後も客でいっぱいで、食べ物もいろいろある。座って茶を淹れると、柳の枝で編んだかごを腕にぶら下げた人がこまごまとしたものを売りに来る。

スイカの種やピーナッツ、煎り豆などだ。ギンナンを炒めて売る人もいる。天秤棒に載せた鉄の鍋で鉄へらの音をさせながら炒める。こちらから声をかけないと、やってくれない。ギンナンを炒めると殻が割れて黄色いさねが現れるが、それを掬って渡してくれる。熱くて香ばしい。香辛料で味付けした牛肉を、乾いたハスの葉に並べて売る人もいる。茶館のボーイにゴマだれ油を持ってきてもらい、かき混ぜてゆっくり食べるのだ。揚州では普通白酒を飲むが、それも売りに来るから、飲めばいい。そして湯をくぐらせた干絲をボーイに持ってきてもらう。北平の干絲は、煮たものだ。味が濃く、料理としてはいいが、つまみとしてはもう一つだ。そこで、大きな白い豆腐干を薄切りにし、それをまた細切りにして碗に入れ、熱湯を注ぐ。干絲が水分を吸って膨らむと湯を切り、ゴマだれ油をかけ、干しエビや細かく刻んだタケノコを振りかけると、できあがる。

あっという間で、豆腐干を切っていると思ったら、すぐ持ってきた。あっさりとした味で、ほかの料理も食べたくなる。

 次は、揚州の小籠包だ。

餡が肉のものもあればカニのものもあり、タケノコを使っているものもある。が、一番おいしいのは野菜を使ったものだ。野菜の柔らかな部分を細かく切って砂糖と油を少し加え、じっくり蒸し上げる。口に入れるととろけるような味わいで、飲み込んでも余韻が残る。乾燥野菜を使ったものもいい。細かく切って砂糖と油を少し加えるのだが、乾きと湿り気が程よくつり合い、じっくり噛んでいると、オリーブを噛んでいるときのような味わいがある。それぞれの料理の量はそんなに多くないので、食事がしたければ、落ち着いて出ればいい。しかしそういう分別があるのはベテランの茶飲み客だけだ。たまたま来ただけの人は、牛飲馬食し、腹を膨らませてから出ていくだろう。

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