多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

皮つき羊肉、周作人

 私の故郷では皮つきの羊肉を食べる。豚肉と同じだ。五代時代の文献に「羊の皮は衣類に使用するもので、料理に入れるべきではない。江南から中原に行った人に中原の人が『江南では、なぜ羊肉を食べるときに皮を剥かないのか?』と尋ねた」との記載がある。つまり、江南では五代の時代にすでに皮つき羊肉を食べていたということだ。南方では羊の皮は衣類に適していなかったので、料理に入れていたのだろう。
 豚の皮は食べるのを好まない人もいるが、羊の皮はさくさくとして甘みがあるので、羊肉を食べるときは必ず食べる。北京には様々な羊肉料理があり、前門内の月盛斎の醤羊肉は名物になっている。

 が、私は今なお故郷の羊肉粥が忘れられず、

蒸羊は最も風味の豊かなものだと思っている。

 羊肉粥の作り方。まず、十二文の金銭で羊肉を一包み買う。それを新鮮なハスの葉でくるんで大きな碗に置き、露店で三文で買ってきた粥を注ぎ込み、塩を入れる。熱いうちに食べるのがいい。自分の家で煮込んだ粥を使えば、おいしさが増す。
 私の故郷の羊肉店では蒸羊しか売っていなかった。だから羊肉スープ用の生肉が欲しければ予約が必要だった。その際、故郷ではダイコンを醤油で煮込むのがやり方だった。ダイコンでくさみを取るということだったが、店頭の蒸羊肉にはくさみがなかった。北京で売っている蒸羊は、五香蒸羊肉で、水煮ではない。
  (1944.5)

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