サンザシ、周作人
冬になると、北京の街で糖葫藘を売っているのをよく見かける。甘酸っぱくて、年寄りも子供も好んで食べる。私の故郷の田舎では「糖山球」と呼ぶ。「山」は「サンザシ」の「サン」のことで、普段は「紅果」と言うが、北方では「山里紅」と言う。砂糖菓子の中に「炒め紅果」
という名のものがあるから、「紅果」と言う名前も知られている。故郷の田舎ではサンザシだけを使っているが、
北京では様々なものがある。「一歳貨声」の中の「糖葫藘車」という項目に「全部で十数種類あり、加熱したサンザシや生のサンザシ、クルミ、白カイドウ、赤カイドウ、ブドウ、ヤマイモ、むかご、オオクログワイ、オレンジ、黒ナツメなど色々なものを使っている」とある。
梨餻、クリームなどを使っていたのは清時代の光緒年間のことで、今は見られない。
種類は多いが、一番いいのは生のサンザシのみを使ったものだ。その他のものは無理に組み合わせたようなもので、他の食べ方がある。それにサンザシも、加熱するとあまりよくない。アズキ餡やクルミを挟むのも余計だ。贅沢とは言わないが、サンザシの酸味に氷砂糖の甘みを加えれば十分だ。簡単なところに良さがある。私は糖葫藘は生のサンザシを使うのが正統で、その他の模造品は何の意味もなく、自然に淘汰されると思っている。
が、最近は物価が高く、子供たちには容易に手に入らないかもしれない。もっともキャンディより高いとは言えないが。中国では以前からサンザシを食用にしてきた。糖葫藘の他に、サンザシ餻
も紅果を用いて作り、見た目はより美しい。が、値段も高く、稲香村という菓子店
のガラスケースの中で玉帯餻
と同じような待遇になっていることが往々にしてある。以前のように露天の果物屋で売っているものではなくなった。
これらの伝統的な菓子に懐旧の気持ちを持っているわけではないが、美味だと思う。最近のキャンディなどよりも上だ。何かいいところがあると言っていい。
(1950.1)