多田敏宏:中国の食と病と文学のブログ

中国の食と病について文学の点から見てみたいです。

高郵のアヒルの卵、汪曽祺

 私の故郷は水郷で、アヒルを産する。高郵のアヒルといえば、有名だ。アヒルが多いと、アヒルの卵も多い。高郵の人はアヒルの塩漬け卵を作るのが得意で、とても有名だ。蘇南や浙江で人に出身地を尋ねられて答えると、相手は粛然として「あ、アヒルの塩漬け卵のところですね」と言う。上海の漬物店でもアヒルの塩漬け卵は売っているが、高郵のものはわざわざ紙で「高郵のアヒルの塩漬け卵」と表示している。

 高郵では黄身が二つあるアヒルの卵も産する。他地域にもあるが、多くない。味は特に変わったところはなく、切り開いた後、見た人が驚くだけのことだ。他地方の人が高郵のアヒルの卵を褒めるのを、私はあまり好かない。貧しくてアヒルの卵以外に何もないところだと言われているような気がするからだ。が、高郵のアヒルの塩漬け卵は、確かにいい。かなりの地方に行き、多くのアヒルの卵を食べたが、我が故郷のものとは比べものにならなかった!袁枚も「随園食単」に「卵の漬物は高郵のものがいい。色が細やかで油が多い」と書いている。

 高郵の塩漬け卵の特色は、質が細やかで油が多いことだ。白身は柔らかで、他地方のもののように粉っぽくない。油の多さでは、他地方のものは及ばない。

 食べ方は、殻をつけたまま切り分けるのが一つのやり方。これは宴席で客をもてなす時だ。普段は、殻を割って箸で掘るようにして食べる。箸を突っ込むと、赤みのある油が滲み出る。高郵のアヒルの塩漬け卵の黄身は、赤みがかっているのだ。蘇北に「朱砂豆腐」という有名な料理があるが、高郵のアヒルの塩漬け卵の黄身で豆腐を炒めたものだ。

 北京でアヒルの塩漬け卵を食べたことがあるが、黄身の色が薄い黄色だった。これではアヒルの塩漬け卵とは呼べない!

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